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「うれしいことが世界でいちばん多いお店」

2023/12/02[Sat]

『PARaDE』参画ブランドを深掘していく連載です。第5回目は2009年発足のトータルビューティカンパニー「uka」。「うれしいことが世界でいちばん多いお店」をビジョンに、国内外にサロンやストアを展開しています。ukaは発足当時から“本物”を提案。ファンがファンを呼び、世界中のクリエイターが熱狂的に支持するエースホテル(米国)の全世界9店舗で、ukaのアメニティが導入されます。「地球規模の“うれしい”を追求し、探求するブランド」と語る代表・渡邉弘幸さんに過去・現在・未来の美のありかたについて伺いました。

プロフィール
渡邉弘幸(わたなべ・ひろゆき)
1966年、東京都生まれ。明治大学卒業後、広告代理店を経て、2009年から株式会社向原(現・株式会社ウカ)に入社。現在、代表取締役として、商品やイベントの企画開発ほか、他業種とのコラボレーションなども行っている。

トータルビューティカンパニー「uka」が提案する、ジェンダーレス、サスティナブル、環境、平和、自分を愛することetc.……。ukaの施術を受けたり、アイテムを使ったりすると、私自身が心地よくきれいになることは、周囲の幸せにもつながっていると感じる人も多く、スタートから13年間、性別や文化を問わず、多くの人から支持されてきました。その背景にあるukaの哲学を、深掘していきます。

【uka公式サイト】はこちら

――2009年発足時に、ukaが提案したジェンダーレスは斬新でした。今でこそ“当たり前”ですが、当時はネイルもヘアも“異性にモテる”ことが重視されていた時代です。ukaがイノベーションを起こし、美容の潮流を変えたと感じている人も少なくありません。

ukaの前身はトータルビューティサロン「エクセル」。これは私の妻・渡邉季穂の祖父が創業した「理容室むこうはら」が始まり。1970年代に季穂の父である向原一義が継ぎ、東京・六本木にも展開するトータルビューティサロンへと進化させました。
理容院では理容師が伸びてしまった髪を切り、ヒゲを剃って清潔にします。季穂は幼いころから“ムダをそぎ落とし整える”施術を見て育ってきました。
一方で美容院は美容師が“その人に合った美しさ”を提案します。季穂は美容師でもあるので、美を実現するプロフェッショナルです。
理容・美容双方の考え方が、ukaのDNA。ですから、商品とサービスがジェンダーレスであるのは、自然なことなのです。それが2009年にエクセルからukaにリブランディングしたときに一気に広まりました。
また、季穂は時間をかけずにキレイになりたいというニーズも汲み取っていました。ukaが大切にしている「忙しくてめんどくさがりでよくばりな大人へ」という考え方があります。

例えば、ヘアでは1回のカットで3通りのスタイルが楽しめる「1cut3ways」をポリシーに、性別や年齢の垣根を超えたスタイルを提案しています。
また、ヘアとネイルの同時施術もukaならでは。六本木サロンではここにエステメニューも新たに加わりました。この美にかける時間を圧倒的にコンパクトにすることも、私たちが真剣に考えている要素のひとつです。

「uka 東京ミッドタウン 六本木」のヘアサロンスペース。男女問わず心地よく過ごせる設計がされている。

――ネイルオイルはじめ、多くの製品が、いつでもどこでも誰でも使えるという、マルチユースなのも納得です。また、ukaは美容業界に、サスティナブルな考え方を取り入れたことも知られています。

ビジョンが「うれしいことが世界でいちばん多いお店」ですから、私、家族、仲間、地域の人……と“うれしい”の連鎖は広がっていき、それは地球に生きるすべてのいきものにつながっていきます。

世界中のすべてのAce Hotel に、ukaのオリジナルアメニティ(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディウォッシュ、ボディローション)が採用されたのも、心地よい使用感と非日常的な香りだけではありません。性別、年齢、人種にも幅広く対応しているだけでなく、環境を汚染しないアミノ酸系の洗浄成分を使用していることにもあります。

この洗浄成分は、川や土など自然に排出されても、微生物などが分解し、環境への負荷が低い処方がされているのです。
私自身の趣味がサーフィンで、よく海に行くのですが国内外のビーチがプラスチック製の漁具や容器などのゴミ(海洋プラスチック)だらけ。人口が少ないエリアであるほど、人手が少ないためにゴミは堆積しています。
そこで、2021年から「ウカのエコープロジェクト」をスタート。既製品のペットボトルの水の提供をやめ、ご持参いただいたマイボトルに店内のウォーターサーバーからお水を提供するスタイルに切り替えました。

「ukaオリジナル ミズボトル」はukaのお店で購入可能。原料の約30%が植物由来のバイオマス。繰り返し使用できる。

――ukaはどこよりも早く、有効な美容素材を取り入れることでも知られています。アルガンオイルもそうですが、日本で初めてシナラオイルを配合したことも話題になりました。

発足当時に、あまり知られていなかったアルガンオイルを採用したのは、優れた美容成分だけでなく、原産地であるモロッコの南西部の女性の自立につながっていると知ったからです。
ここにしか生えないアルガンツリーの実をヤギが食べ、吐き出した種を女性が集めて加工するという製造過程をたどっていたのですが、大手メーカーが目をつけて大量生産に乗り出し、大規模に産業化されていきました。
それでは、私たちの考え方とは異なる部分も生まれてくるので、新たな素材を探しました。そんな時に出会ったのが、シナラオイルです。
これは西洋アザミの古代種の種子から採れるオイルで、美容に有効な成分がアルガンオイルの2倍も入っていたのです。使用感もべたつかず、心地いい。そこで、ネイルオイルはじめ、多くのアイテムに採用しました。

「ukaハンドクリーム」にもシナラオイルは配合されている。

――皆が「うれしく」なるために、企業活動を続ける……まさにPARaDEの考え方と似ています。

PARaDE代表の中川淳さんに初めてお会いしたときに、「日本の工芸はものすごく価値が高いのに、届けられるような形になっていない」とおっしゃっていました。
事実、職人さんたちの賃金は低く、後継者も育っていないのが現状です。それを中川さんは自治体やブランドと結びつけ、地域創生や文化の継承に繋げている。その姿勢に感動したのです。
ukaと「中川政七商店」とのコラボレーションをしたときにも、その考え方が深く伝わってきました。PARaDEに参加したのも共鳴する部分が大きく、目標が同じだからです。
参加する経営者の皆さまから、さまざまな考え方や知識を得られて、視界が広がることも感じています。

「うれしい」の連鎖の先にあることとは……次回はukaのチャリティについて紹介していきます。

後編に続きます

取材・文/前川亜紀 撮影/フカヤマノリユキ