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ぐびぐびぐび、ぷはーっっ。コエドビール朝霧さんが選ぶ夏の1本

2023/11/26[Sun]

1996年に醸造をスタートした、COEDOビール。Beer Beautifulをコンセプトに、World Beer Cup、European Beer Star Awardなど世界のアワードを多数受賞。職人によるものづくり、ビール本来の楽しみ方を発信しています。
今回は、代表取締役 兼 CEOの朝霧 重治さんに、「この1本を選ぶ理由」というテーマでお話をいただきました。COEDOビールの定番は、漆黒、伽羅、紅花、白、瑠璃、毬花の6種類。朝霧さんの「この1本」とは?

朝霧重治さん……1973年 埼玉県川越市生まれ。一橋大学卒業後、会社員を経て、株式会社協同商事に入社。コエドブルワリー代表取締役社長

―― 公式サイトを拝見すると、美しいビジュアルと的確な情報があり、読んでいるだけで楽しくなります。定番のほかに、日本全国の代表的なお祭りをビールで表現したシリーズなど、期間限定品も多いです。COEDOビール代表の朝霧重治さんにとって、今夜飲むとグッとくるビールについてお聞かせください。

今夜飲みたい1本ですか……私、毎日のようにビールを飲んでいるのですが、昨日は飲んでいないのです。ここ最近、意図的に週1回だけ飲まない日を作っています。この日は、近くのジムに行き1時間ほど泳いだ後、サウナに入ります。

―― 休肝日を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

健康状態を気遣ってではないのです。2年前にサウナに出会い、自分の中での価値観が変わったのです。サウナの入り方を知り、アルコールとは違うタイプの楽しみを体感。たまたまよく行くジムにサウナがあり、水泳とともに週に1回味わうことが、ルーティンになっていきました。週の真ん中に、水泳とサウナで何かを“落とす”というのが心地いいのです。

―― ビール好きにとって、サウナとビールは不即不離のように感じます。あえて飲まない理由はなんでしょうか。

それは、ビールがあまりにも日常だからです。私はお酒の中で最もビールが好きです。ビールを醸造する仕事しており、四六時中ビールのことを考えている。つまり、ビールが自分自身であり、日常でもあるのです。
また、ビールって常に冷蔵庫に存在し続けている。ワインや日本酒とは異なるり、無意識的に手に取れる存在だと思います。その日常の連続を「あえて断つ」ことで見える世界があったのです。ちょっと離れると、視点が変わる。
この日は、一日の終わりに、炭酸水にアップルビネガーを入れたものを飲みます。澄んだ気持ちになりますね。いろんなものが落とされていく。そして、翌日からビールの日常が始まる。

醸造所での朝霧さん。モルトを手に取っているところ。

―― 朝霧さんにとって、日常とはなんでしょうか。

川越で生まれ育ったので、雑木林の緑があって、これが今の季節(5~6月)が格別に美しいこと。あとは料理でしょうか。今日も朝から娘の弁当を作ってきました。食べることとビールは日常ですね。
ですから、サウナは非日常……いや、日常ですが、奥底にある日常ですね。日常の隣に非日常を感じることがありますが、日常の奧の日常というのは、なかなか気づけることではないかな。

―― 「待つのも味のうち」と言いますが、1日ぶりに飲む、今日のビールに何を選ぶのでしょうか。

今は新緑の季節ですから、今日のビールは『毬花』かな。
『毬花』ってクラフトビールの中でも難しくないビールなんです。香りが魅力的で、単純においしい。頭でっかちにならなくていいんですね。
従来のビール軸からもブレていなくて、キンキンに冷やして、霜の付いたグラスで飲むのが最高なんです。

『毬花』の商品カラーは新緑を思わせるグリーン。

Coedoビールの中でも、現代の生活との親和性が高く、難しいこと考えなくていいので、日常のクラフトビールともいえるんです。
コロナ禍以前は、私たちは海外のフェスにも出店していました。ある年、台湾のフェスに参加したのですが、ブースに来た現地のオジサンが、『毬花』を飲み「むちゃくちゃうまい」と言ってくれた。『毬花』には日常があるのです。それでいて、クラフトビールをマニアックに楽しんでくださる方々も惹きつける。
相反する嗜好を持つ人々を魅了するという、面白いビールを造れたと思います。

―― 大手メーカーのビールは日常、クラフトビールはワインや日本酒と同じく、非日常に分類している人は多いと思います。

そうなんですよ。クラフトビールを特別なものとして楽しんでくださっていることを感じています。その中で『毬花』は日常に軸足を置ける。でもまあ、僕の場合はビールが日常だから、ビールがないのが非日常(笑)。
まず、『毬花』は飲みやすいんです。アルコール度数がやや低く、4.5%なんです。(通常のビールは5%)

―― 非日常から明けた、1日ぶりのビール『毬花』をどのように飲むのでしょうか。

今日は缶の『毬花』を選び、これをグラスに注いで飲みます。愛用のグラスは『スガハラガラス』さんと一緒に作った『毬花』のためのグラスです。職人さんが底にグリーンを入れてくださっているんですね。
『毬花』はラベルこそグリーンですが、中身の液体は黄金色。注いでいるうちに、グラスから緑がだんだんと消えていき、やがて黄金に染まっていく。このグラデーションにワクワクします。
飲むタイミングは、家族と一緒の夕飯の時間。合わせる食べ物は、旬の野菜。『毬花』や『瑠璃』は野菜との相性がいいんです。
今の季節ならアスパラガスでしょう。私たちはオーガニック食材の商社も経営していますから、社販で購入したフレッシュなアスパラを、間髪入れずに茹でます。
家なので、おしゃれにアレンジはせず、シンプルにマヨネーズをつけます。このマヨネーズにもこだわりがあって、私は『松田のマヨネーズ 甘口』が譲れない。この製造元も私たちと同じ埼玉県にあります。
マヨネーズは、他のメーカーのものも食べてみたのですが、これに落ち着いた。やはり素材と作り方の丁寧さが伝わってくるんです。マヨネーズの主な材料は油と卵ですからシンプルです。それだけに、どのように作られているかがわかるんです。とても柔らかく、気持ちにも味覚にもピッタリきます。

―― 朝霧さんが、日常を楽しんでいることが伝わってきます。家族と一緒のダイニングテーブルにいて、ビールを飲みながら茹でアスパラを食べているという、幸せな風景が浮かんでくる。

今、お酒の扱いは非常に難しい。ネガティブなイメージを持つ人がいることもわかりますが、必ずしもそうではないと思うんです。民俗学者・宮本常一やイザベラ・バードも残したように、お酒は日本の文化、日常生活に深く食い込んでいるんです。
子どもにとって、身近な大人が、家で楽しそうに飲んでいると、お酒好き人口は増えると思います。これからの社会に、「健全な飲み手」は必要だと感じています。
お酒の良さを、下の世代に伝えていけるのではないかと。これからの課題は、子どもが20歳になったときに、最初の1杯を飲む儀式のようなもの……文化ともいえるものを育てていくことかもしれません。
私が実行している、サウナの後に1日飲まないどころか、子どもには“あと10年待て”というのですから、醸成の歳月が違います。最初の1杯を飲むときに、どういう状況でどういう気持ちなのか。「成人したら、なんとなく飲んでいた」ではなく、きちんと境界線を引き、お酒の世界へ迎え入れたいですね。
今、コロナ禍を経験し、様々なものを見直すようになっている人は多いと思います。日常だったり、当たり前だと思っていることに、何があるかを発見するタイミングなのかもしれません。

毬花 -Marihana-
淡い黄金色と純白の泡にシトラスを想わせるアロマホップが華やかに香るセッション・IPA。ホップの魅力を存分にお楽しみいただけるように、香り高いホップを贅沢に投入しその香りを丁寧に引き出しました。香り高く洗練された苦味のあるしっかりとしたフレーバーと、低めのアルコール度数にクリアな飲み口のドリンカビリティを両立させた味わいです。ホップの個性とその風味を最大限に引き出す製法にちなんで毬花-Marihana-と名付けられました。

Session IPA
原材料:麦芽、ホップ
アルコール度数:4.5%
内容量 缶 350ml、瓶 333ml